ロードバイクが好きな人の習性として、自転車に関するものにやたらに反応してしまう、というものがあります(断言)。
ということで、自転車でのツーリング旅を描いた小説、『イノセント・ツーリング(湊ナオ)』を読みましたので、その紹介になります。
あらすじ
緊急事態宣言が明けて2020年も夏を越え、大学時代の親友の夫とその息子と、紀伊半島のツーリングに出かけることになった。若くして命を落とした親友との約束を果たすため、そして、ひとり親で育った息子が母を新たに知るため。就職氷河期世代が親になっての心情もそこはかとなく漂うハートウォーミングなロードムービー風の小説が本書。日常の景色だけでなく生活スタイルも変わってしまった。変わらざるをえなかった。リセットするにしても、調子を取り戻すためにも、記憶の底に押し込めてしまった大切なものをもう一度見つけ出して、新たに前に進もう。コロナ禍でぽっかり出現したつかの間の人生の空白期間。みーんな元気の在庫がなくなった。でも、だから……3人それぞれが生きるために必要なささやかなものを見つけた、数日間の旅の物語。
amazonより引用
こうやって引用したあらすじを見ると「コロナ禍」が一つのキーワードになっている雰囲気がありますが、実際読むとあんまりそんな感じではなく、大事な人を亡くした喪失感を抱えた登場人物達が自転車ツーリングに向かう、といったテイストに感じました。
感想
あらすじにある通り主人公が、大学時代の親友の夫とその息子と、紀伊半島のツーリングに出かける、という話です。
大学自体の親友の夫、というのがわかりづらいですが、親友がいて、その親友と結婚した人、という意味ですね。
登場するのはランドナーと呼ばれる自転車、これに乗って紀伊半島を旅し、故人との思い出をたどるという物語となります。
ロードムービー的な物語ですが、風景描写というより気持ちの動きが中心に描かれていました。
この物語でキーになるのが、ツーリングノートというもの。
主人公と亡き友人は学生時代に紀伊半島にツーリングに行っていたのですが、そこで今は亡き友人はツーリングノートを毎日書いていて、それを見つけた友人の息子がツーリングしようと言い出すんですね。
主人公も断片的にしか覚えていない紀伊半島での過去のツーリング、これを改めて旅する中で思い出していきます。
思い出がどんでん返しを呼ぶといったものでもありませんが、友人を亡くした悲しみから蓋をしていた記憶をゆっくりと思い出していき、悲しみを受け入れ前を向く姿は励まされるものがありました。
今はコロナによる閉塞感とか、不安感とか、そんなものが渦巻いているように感じる人も多くいると思います、そんな気持ちを感じる人にとってはちょっと前向きになれる物語だと思います。
また、誰かと文句を言い合いながらでも、気持ちの向くまま旅に出たいと個人的に感じました。
自転車旅ならではのハプニングなどに共感する方もいるかも。
kindleでも読めますよ。
他にもある自転車小説についてはこちら。
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