以前にロードレース選手の山本元喜選手がかいた本を紹介しました。
その本は、「ジロ・デ・イタリア」という3週間に渡るレースについての手記でしたが、今回紹介する本は、「一つのレース」のみに焦点を絞ったノンフィクションとなります。
2014年の全日本選手権ロードレースを舞台に、レースの展開がどのように変化し、そこで走る選手が何を考えていたのか、丁寧な取材を元に克明に描いた作品です。
あらすじ
強い者が勝つとは限らない。気候、展開、チームの作戦、選手個人の思惑など、複雑な要素が絡まり、実力通りに順位が決まるわけではないロードレースは、ときに人生にたとえられる。本書は、二〇一四年六月、岩手県八幡平で開催された全日本選手権を詳細に追ったノンフィクションだ。二百キロ超、五時間四十一分、悪天候の中で激闘を制したのは、意外な男だった。出場選手をつぶさに取材。年に一度、日本一を決定するレースで勝つことが、いかに難しいか、いかに勝つことが素晴らしいかを体感できる感動の記録。
amazonより引用
感想
ロードレースの面白さを知ることができる一冊です。
ロードレースのリザルトは個人で出ますが、実質チームスポーツ。
個人の力も絶対に必要となりますが、それだけで勝利を掴めるわけでもないのが面白いところです。
レースは、先行して走る「逃げ集団」とそれ以外の選手たちが互いに集団になって風の抵抗を受けないように固まっている「プロトン」という大集団に分かれて進むことが大半です。
それぞれの集団では、その中でペースをあげるかどうかで心理戦が行われます。
集団はペースを上げる必要があっても、自分がそこで力を使ったら疲れが溜まり勝てなくなる、かといってみんなが先頭を譲り合ったらペースが落ちていく。
そんな心理的な駆け引きがどのように行われているのか、それを様々な選手からのインタビューをもとに描いています。
ロードレースはかなり長時間の競技となりますし、見ている側からすればのんびり進んでいるように感じられることもありますが、その中でも選手たちは様々な駆け引きを繰り広げています。
選手たちが具体的にどのような思惑を持ってどんな行動をとったのか、それがこの本では細かく知ることができます。
ここで出てきる選手たちは、今でも(2021年8月現在)最前線で活躍している選手も数多くいます。
そんな選手たちの勇姿を知ることができ、ロードレースの戦略の奥深さ、複雑さを体感できる一冊となっています。
さらに表紙は漫画『AKIRA』の作者である大友克洋氏が手掛けており、巻末の解説はロードバイク小説の怪作『走ル』を書いた羽田圭介氏が寄稿。
『走ル』についての記事はこちら。
いろんな見どころが詰まっている一冊ですね!!
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